寒くなってきましたね。今日はトレーニング中に初雪を観測したように思います。

今週日曜日、地区の集会所で、地域の人たちを集めて、健康セミナーを開きます。そこで話す予定の内容をスライドにまとめましたが、これは、ここで皆さんに訴えていきたい内容と一致していますので、スライドの内容をこちらでも公開したいと思います。

1.メタボと介護の関係
2.筋肉の利点
3.根拠が大事
4.誤解を正す

1.メタボとは
メタボとは、栄養過多となるような生活習慣の結果。
つまり、摂取するカロリーが消費するカロリーより多いので、栄養が身体に蓄積されることより生じる。
高血圧は塩分摂取過剰。
糖尿病は、糖分(炭水化物)摂取過剰。
高脂血症は、脂質(および総カロリー)摂取過剰。
これらの病態は、「インスリン抵抗性」の増大という因子を中心として相互に絡み合い、お互いを増悪し合って、最終的に脳心血管疾患へと至る。
「インスリン抵抗性」と内臓脂肪量が強く相関する、とされている。
高血圧、高脂血症、糖尿病、これらはすべて最終的に脳心血管疾患へとつながります。
長い年月のメタボは血管をボロボロにし、結果として、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血といった病気につながります。
脳心血管疾患の結果、人のADLは低下し、半身麻痺、寝たきり、認知症など、他人の介護を受けないと生き延びられない身体になってしまいます。介護をされて生きる余生より、自立して自分でやりたいことをやって生きていける余生のほうが良いですよね。
また、高齢化地域の医療費、介護費用は、こうした要介護者が増えることで跳ね上がっていき、介護の人手の労力という面だけでなく、若年者への介護費用負担は重くなるばかりです。
地域の産業、雇用が介護関係ばかりになっていく、悲惨な地域とならないように、県北のメタボを徹底的に減らしていく必要があるのです。
ピンピンコロリ、を目指すためには、メタボを解消せねばなりません。
これがメタボを治療する主な理由です。

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生活習慣病の中でも三大成人病の有病率は高く、喫煙に次いでこれらが死亡リスクを高めることは明らかとなっている。
三大成人病の予防、治療に運動療法の有効性は明らかであるが、その効果的な適用は行われていない現状がある。
例えば、体重ばかりを効果の指標とする、食事摂取量を減らすダイエット方法ばかりが多様化する、など、社会的にはまだまだ対策は混迷している状況と言える。
一般に広まっている、健康に関する間違った方向性を正し、真に有効な生活習慣病対策が小さなエビデンスの積み重ねから明らかにされるべきである。

2.筋肉の利点

最終目的は体の脂肪を減らすことです。これにより血管の荒廃を防げます。
脂肪を減らすのに必要なことは、食事制限と運動療法。
身体に入ってくる栄養を減らすのが食事制限
身体が消費する栄養を増やすのが運動療法
しかし、美味しいものを食べるのを我慢するより、積極的に運動して太りにくい身体を作るほうが前向きな取り組みなのではないでしょうか?
筋肉を増やすことで、基礎代謝量(=じっとしていても消費するカロリー)が増え、太りにくい身体になります。
ただ走ったり歩いたり(有酸素運動)をするよりも、筋肉を増やしてから有酸素運動をするほうが、脂肪を減らすことへの近道となります。

サルコペニアという病名をご存知でしょうか?
加齢とともに筋肉量が減少し、活動量の低下、易転倒性(転びやすくなる)などにつながる筋委縮状態につけられる呼び名です。
これも健康寿命の短縮、介護需要の増大につながる病態です。
これは端的に筋肉が足りないことで起こることなので筋トレで予防できます。
何歳になっても、筋肉が鍛えられない、ということは無いのです。

では、どうすれば筋肉を鍛えられるのか?

トレーニングをすれば鍛えられます。
まず、鍛えたい場所を決めます>脚、胸、背中、腕、など。
鍛えたい場所が決まれば、トレーニングの種目が決まります>胸=ベンチプレス。
トレーニングの内容は、その動作が、正しいフォームでぎりぎり8~10回反復できる重さの負荷で行い、それを1セットとして3セット行うのが基本です。セット間には1~2分の休憩時間を入れます。
一つのトレーニング部位について、トレーニングは週2~3回まで、間に48時間は休憩時間を挟むようにします。
トレーニング前、トレーニング中、トレーニング直後などにたんぱく質を中心とした、十分な栄養を摂ります。
こうして、トレーニング、栄養、休息すべてがそろうことで確実に筋肉は発達します。

私も含めて陥りやすい間違いとして、トレーニングメニューをこなせば、それでいいと思っている方が多くみられます。

100㎏上がるから、すごい、何回持ち上げられるからすごい、ということではありません。
トレーニングの目的はあくまで筋肉を発達させることです。
従って、トレーニング動作の完遂、試行回数、拳上重量が目的ではないのです、これは良く勘違いしてしまう点です。
筋肉の発達のためには「筋肉に刺激」が入ることが重要です。
あらゆる生物は環境に適応すべく順応していきます。
筋肉は、重い負荷を刺激として受けたとき、次にその重さに耐えられるように、自身を肥大強化しておこうとします。
この環境への順応という仕組みを利用して筋肉を発達させることがトレーニングなのです。
従って、簡単に完遂できてしまうような内容では筋肉への刺激は入りません。
翌日に筋肉痛になってしまうような、そんなトレーニングをしなければ筋肉は発達していきません。
毎日、腹筋100回、腕立て100回やっている、と自慢しているような人を良く見かけますが、毎日同じことをやっているだけでは筋肉は発達しません。

 

3.根拠が大事

アガリスクの話:

カワリハラタケ (Agaricus subrufescens) とはハラタケ属のキノコの一種。アガリクス (Agaricus)、ヒメマツタケの俗称で知られる。信頼できる科学的なデータはないが、免疫賦活作用からがん予防・抗がん作用があるとして、日本ではサプリメントとして広く服用されていた。国立健康・栄養研究所は、ヒトでの有効性と安全性については信頼できるデータが2011年3月現在見当たらないとしている。

1)「有効性」についての検証
「有効性」について、実際のがん患者を対象に調べた研究報告は、非常に少なかった(8件)。
「有効性」を評価する際に最も重要な「がんの進行程度」や「生存率」を評価指標とする質の高い研究報告が1件も見つけられなかった。

2)「安全性」についての検証
「安全性」についての研究報告も、非常に少なかった(4件)。100%の安全が保証されるものではなく、「軽度」(腹部膨満感や下痢)から、「中等度」(皮膚病変)、「重度」(劇症肝炎)に至る、有害作用の報告があった。これらの有害作用がまれなのか、比較的多いのかについては、わからなかった。
以上の結果をまとめてみますと、

・ がんの「進行」や「生存」に対するアガリクス茸の有効性について、現時点では、その有無を判断できるだけの適切な科学的根拠がない。

・ アガリクス茸には、軽度から重度に至る有害作用が生ずる場合があるが、その頻度はわからない。 と結論を出しています。

つまり、今回の報告で、アガリクス茸についてがんの進行を防ぎ、生存率を高める効果を判断できるだけの、適切な科学的根拠がないことが判明しました。

有効性を検証したエビデンスが無い
安全性を検証したエビデンスも無い
有効だ、という風評が無数にある
危険だ、という報道もある
売れば大変に儲かる
医療者としての反応:効果もないが害もないから気休めになるのなら使用してください。ただし、あまりお金をかけるのは考えものです。

では、いったいどうすればアガリスクは薬として認められるのでしょうか。
そのために行われるのが臨床研究であり、
臨床研究で、効果が証明されれば、アガリスクはエビデンスのある薬剤、ということで保険収載されます。

根拠があるのかどうか調べましょう。

世の中には、根拠もないのに
◦水素水は体に良い
◦EM菌は水質を改善する
◦R-1ヨーグルトでインフルエンザ予防ができる
◦アガリスクで癌が治る
などといった、エセ科学による商売がはびこっています。

特に運動療法における栄養補助や、サプリメントの業界では、こうした根拠のない商品が氾濫しています。根拠があるものを利用していくようにしましょう。

4.誤解を正す

最後に、運動療法を始める方に

ぜひ気を付けていただきたい、誤解について話しておきたいと思います。
①体重は運動をすれば増えます!
筋肉は脂肪の1.5倍の重さのある組織です。筋肉が増えたら体重は増えます。
体重が増えても、脂肪が減って、筋肉が増えたのなら、運動は成功しているのです。
体重だけで健康管理をするのはやめましょう。体脂肪率を測定しましょう。
②農作業や、大工仕事、家事はメタボを治す役には立ちません!
有酸素運動なら、一定以上の心拍数を30分以上継続するような運動が必要です(最近では諸説あります)。
どんなにしんどい労働でも、5分おきに休めるような労働では、メタボの脂肪を減らす効果は少ないです。
それよりも筋トレを週に3時間やるだけで、普通の生活で消費するカロリーは増えていきます。
③炭水化物ダイエットは効果があります、ただし
極端に炭水化物を減らすことは、体に有害です。
日本の食事は普通に食べていると総カロリーの80%以上が炭水化物になってしまいます(ごはん、お餅、うどん、ラーメン、パン、ピザ、スパゲッティなど)
これを50%に減らすだけで、十分メタボを改善する効果があります。
④プロテインは、ドーピングの薬ではありません!
大豆や、牛乳といった天然の食材から抽出された、タンパク成分です。
通常の食事だけではどうしても筋肉を作る材料が足りなくなるため、またトレーニング直後といった大事なタイミングで栄養を摂取するため
積極的にプロテインを利用していただきたいと思います。

スライドをそのままコピーペーストしたので若干構成が分かりにくいかもしれませんが

上記のような内容を今週末地域の方たちにお話しする予定です。

2016.12.16.加美川クリニック 院長