世の中何が正しいか。

誰もが行動や、方針を決めるうえで、判断の元になっているものはなんでしょうか。
「根拠」ですね。
もちろん勘で行動を決めることもあるけれど、特に公共的な行動においては、皆が納得できるような根拠が、行動や方針の根元にあります。
医学においては、「科学的根拠=エビデンス」と呼ばれます。
例えば、前立腺癌の治療において、化学療法と放射線療法、二つの治療法があったとして、ある患者さんの前立腺癌の治療でどちらが優先されるのか、科学的根拠を持って、医学は推奨する方針を提示します。

しかし、世の中には、根拠の存在しない治療法、民間療法があふれています。
例えば
・ブルーベリーは視力回復に良い
・R-1ヨーグルトでインフルエンザウイルス感染が予防できる
・アガリスクを食べると癌が治る
・水素水を飲むと体に良い
・EM菌は水質を改善する
と言うような話を聞いたことがありますよね?
これらを使った商売まで起こり、実際かなりの数の商品が売れています。
しかし、これらの言説には科学的根拠がありません。
もし、科学的根拠があるのなら、厚生省により、治療薬として認可されているはずだからです。「トクホ」と冠せられている商品も、体に害はない、ということが保障されている程度のことです。

どうすれば、「科学的根拠」があることになるのか。
それは、比較をすることです。同じ程度に視力の悪い患者さんを200人集めてきて、無作為に100人ずつに分ける。片方の100人にはブルーベリージュースを飲ませ、もう片方の100人にはブルーベリージュースに味も色も似た飲料を飲ませる。この生活を1か月続けてみて、2群の視力の平均を比べ、ブルーベリージュースを飲んでいた群がそうでない群よりも明らかに視力が良くなっていたとしたら、ブルーベリーには視力回復の効果があることが証明されるのです。このような実験のことを「臨床試験」と呼びます。

健康に良い、病気が治る、予防できる、どんなこともでも構いませんが、ある要因にこのような効果がある、と言うためには、こうした臨床試験が必要なのです。
この臨床試験で、「有意差」という統計学的な差があることが証明されれば、はじめてその要因にはそのような効果がある、と科学的に言えることになります。

そして医療が扱うお薬は、すべてそうした臨床試験をクリアし、効果が証明されているものです。
それでも検知されていない副作用があったり、効果はあるけれどもわずかな効果であったり、個人差が大きかったり、薬にもいろいろと問題があるのは確かです。

しかし、科学的に根拠が証明されていないのに、たまたま効果があった人の個人的経験を誇大広告し、商品を売りつけようとする行為は、ほとんど詐欺と言ってよいでしょう。
特に、健康食品、サプリメントの領域では、こうした根拠のない詐欺商品が多く出回っているように思います。十分にお気を付けください。

当院では、運動療法中の栄養補給、サプリメントについても、まずは科学的根拠のあるものを優先してお勧めしていますし、根拠のないものについては、「これには根拠がないのだけれども」という但し書きを必ずスタッフ一同で意識しながら使うようにしています。

トレーニングもどのような方法が、健康を増進し、メタボを治し、リバウンドをさせないのか。常に根拠を追求しながら我々は指導するようにしています。
今度、そうした根拠の一つ一つをこのブログにアップしていけたらな、と思っています。