インフルエンザが猛威を振るっている2月です。皆さん規則正しい生活をこころがけ、ご自愛ください。

 

さて、自分で言うのもなんですが、また面白い検証実験を開始しましたのでご報告いたします。

 

今回はこれ。2018.2.8.取り込み画像 103

Abs of Steelクリームは2018年3月号の月刊ボディビルディングで紹介された、脂肪燃焼クリームで、コエンザイムA(補酵素A)、Lカルニチン、カフェインが特許取得済みのシナジー効果(+50%)の配合で、1日2回28日間腹部に塗り、皮下脂肪50%以上減、皮下組織8.2%減らす効果が第3機関データで証明されている、とされています。

世の中には、痩せたい人たちをターゲットにした、こうした商品があふれています。しかし、その大半は高額でありながら、科学的には効果の証明されていない、眉唾な商品です。

このAOSクリームも、第3機関で証明されているとか書いてありますが、検索した限りはそんな論文化されたデータは見つかりません。当院としてはそんなものを鵜呑みにして使用することは到底できませんので、また臨床試験を行うことにしました。

目的:STEELFIT社から販売されているABS of Steelの皮下脂肪燃焼効果を検証します。

方法:参加被験者にABS of Steel(以下AOS)を支給し、1か月間使用し、その効果を検証します。

以下に研究デザインを示します。

研究デザイン:非ランダム化、前向き介入試験

Patients:健康成人トレーニー10名程度、対象5名程度

Intervention:AOSクリーム塗布一か月

Comparison:塗布しない部位との比較 および塗布しない比較対象者との比較

Outcome:皮下脂肪厚:エコーによる皮下脂肪厚測定

この効果を検証するため、参加者は、1か月間、毎日一日二回(トレーニング前と就寝前)に腹部および、大腿部のどちらか片方(右側半分もしくは左側半分)にのみ塗布します。

そして、開始前、2週間後、1か月後に、超音波および、把持法にて皮下脂肪厚を左右の腹直筋中部直上、左右の大腿直筋筋腱移行部直上で測定し、比較します。

この研究の特徴としては、クリームを塗る部位を体の半分に限定することで、皮下脂肪の厚みに局所的な差異が生じるかどうかを見ている部分が重要です。もしこの時点で(同一個体の中で左右差として)有意差が生じれば、クリームに効果があることはほぼ明らかです。

しかし、経皮吸収された薬効成分が血流に入り全身に作用することは十分考えられるので、5名程度ですが、AOSクリームを全く使用しない比較対象も準備します。

2018.2.17.取り込み画像 001

このように超音波を使い、皮下脂肪厚を測定します。ちなみに私は現時点で腹部の皮下脂肪が右4.9mm,左4.9mm,大腿遠位前面の皮下脂肪が右6.7mm,左6.9mmでした。

これから、身体の左側にのみ、AOSクリームを毎日塗布します。第3機関とやらが証明したことが正しいなら、1か月後にはこれが左側のみ腹部で2.4㎜、大腿部で3.4㎜という薄い皮下脂肪となっているはずです!

はっきり言うと、私はこのクリームの効果を信用していません。成分のコエンザイムAというのはTCAサイクルの起点となるアセチルCoAのために必須の要素、カルニチンは確かにミトコンドリアに脂肪酸を利用促進させる成分、カフェインも代謝を高める成分ですが、これらを経皮吸収させたところで1か月で皮下脂肪が50%も減るとは到底信じられません。

ですから、HMB-FAのときと同様の結果となってしまうような気もするのですが、、、

それでもこうして臨床研究を行い、真偽のほどを確かめることは、私のような、医療者であり、トレーニーであり、予防医療としてのトレーニングジムを運営するものこそが、取り組むべき領域だと考えています。

万が一にも有意な効果が証明されるようなら、それはそれで嬉しいことですしね!Steelfit社に恩を売ることになりますが。

初めてクリームを塗ってみたところ、こうなりました。2018.2.16.取り込み画像 003

左半分だけ明らかに発赤しています。なんだか効果ありそうですよね!

この研究には当院の職員10名強が参加してくれています。

皆さん1か月後の結果報告をお楽しみに!

2018.2.16.加美川クリニック院長