HMBの効果について「文献査読」

HMB-FA

HMBというサプリメントを皆さんご存知でしょうか?ネットで検索すれば、筋肉がついて、脂肪が減る、魔法の薬、みたいな取り扱いをされていますが、これはサプリメントです。

サプリメントとは、通常の食事からも摂取できる栄養素だけれども、食事だけでは十分に摂取できないので、精製したその栄養素を追加で摂取する、という意味になります。

 

筋肉を作る材料がたんぱく質であることを皆さんご存知と思いますが、たんぱく質は分解するとアミノ酸になります。アミノ酸は20種類あり、これらがいくつか繋がってたんぱく質を構成します。体内で合成できない、つまり食事からしか摂取できないアミノ酸を必須アミノ酸、と呼び9種類あるのですが、その中でも構造が分岐鎖を持つ、分岐鎖アミノ酸は、筋肉の合成に非常に重要な役割を果たすため、BCAA(分岐鎖アミノ酸、の英語を略したものです)と呼ばれ、具体的には、バリン、イソロイシン、ロイシンの3つのアミノ酸のことです。

 

中でもロイシンはmTORと呼ばれるシグナル系やインスリンの分泌を介して、筋肉におけるタンパク合成を促進する作用があるといわれています。

 

そして、前置きが長くなりましたが、ようやくここで出てくるHMBという物質。

これはロイシンの代謝産物であり、βヒドロキシβメチルブチル酸という英語名称の略となります。ロイシンは体内でHMBに代謝されますが、1gのHMBを産生するために20gのロイシンが必要になるといわれています。しかしHMB自体がどのように筋肉のタンパク合成に関与するのかはっきりとわかっているわけではありません。ただ、HMBにより、確かに筋肉の分解が阻害され、筋肥大の効果が確認できる、という臨床研究が発表されています。

 

そのいくつかに関しては下記HPに記載されていますので参照してみてください。

 

http://kintoregoods.net/hmb-kouka.html

 

今回、私はHMBの中でもHMB-FA(HMB遊離酸)(市販のHMBの多くはHMBカルシウム塩として販売されています)の効果を検証した、Jacob M.Wilsonさんの論文を2014年European Journal of Applied Physiolosyという雑誌から読んでみましたので、その内容を紹介します。

 

 

題名:レジスタンストレーニング中の個人の、筋量、筋力、パワーに対する、12週間のHMB-FAサプリメントの効果

 

要約:

導入:HMBを使ったこれまでの研究は限定的なものであった。HMB-FAの長期にわたる効果を見た研究はこれまでなかった。であるから。トレーニング中の個人の筋量、筋力、パワーに対する、HMB-FAの12週間投与の効果を調査した。さらに、オーバーリーチングトレーニング期における、筋ダメージとパフォーマンスにおけるHMB-FAの効果も調べた。

方法:調査期間を3つのフェーズに分け、二重盲検ランダム化比較試験を行った。被験者は、プラセボ投与群と、HMB-FA投与群にランダムに割り付けられた。フェーズ1は8週間の休息期間のあるレジスタンストレーニングプログラム実施、フェーズ2は2週間のオーバーリーチングトレーニング期間、フェーズ3は2週間のテーパリング期間。筋量、筋力、パワーを0、4,8,12週目の終わりにテストし、HMB-FAの慢性的な効果を評価した。オーバーリーチング期間の9,10週目の終わりに、血中コルチゾール、テストステロン、クレアチンキナーゼ(CK)を調べた。

 

結果:筋力(1RMベンチプレス、スクワット、デッドリフトの拳上重量の合計)において12週間で、HMB-FA群では77.1㎏±18.4㎏の上昇、プラセボ群では25.3㎏±22.0㎏の上昇(p<0.001)。垂直跳び熱量においてHMB-FA群で991±168W、プラセボで630±167W(p<0.001)。除脂肪体重量においてHMB-FA群で7.4㎏±4.2㎏、プラセボで2.1㎏±6.1㎏(p<0.001)の増加、いずれにおいても、投与群で有意な上昇を認めた。オーバーリーチング期間においてCKの値が、HMB-FA投与群では-6±91IU/l、プラセボで277±229IU/l(p<0.001)、コルチゾールはHMB-FAで-0.2±2.9μg/dl、プラセボで4.5±1.7μg/dl(p<0.003)とどちらも有意に低かった。

 

結論:HMB-FAの投与は、レジスタンストレーニングにおける筋肥大、筋力、パワー増大に、促進的に作用すると結論できる。さらに、オーバーリーチング期間におけるパフォーマンス減衰に抑制的に働く、と結論できる。

 

以上がこの論文の要約部分です。結論から言うと、HMB-FAは、筋量増大に非常に効果がある、ということになります。3か月で除脂肪体重に約5㎏の差が出ていますので、これが事実ならものすごい差が出来ていることになります。

 

オーバーリーチング期間という言葉が、少し意味が分からないと思うので解説しますと、通常のレジスタンストレーニングというものは、間に休息期間を設けながら行います。筋肉が超回復を行うための休息が必要であるため、同じ部位の筋肉のトレーニングは、48h~72hは休息を置いてから行うことが推奨されています。この休息を敢えておかず、毎日同じ部位のトレーニングを行ったりすることをオーバーリーチングトレーニングと言っているようです。オーバートレーニングというと、故障の原因とされるトレーニングのやり過ぎのことですが、その一歩手前の状態をオーバーリーチング、と言っているようです。この研究では、ワザとオーバーリーチングトレーニングを行い、その期間の筋肉の破壊を、HMB-FAが抑制できるかどうかを調査して、結果として、抑制できた、と結論付けています。

つまり、HMB-FAは筋肉の破壊を防ぐのに効果がある、と証明されたことになります。

 

さて、論文はここから本文に入るのですが、すべてを翻訳していたら膨大な量になってしまいますので、私が重要だと思う部分を抜き出してご紹介したいと思います。

 

導入部:1996年にNissenらがHMBのトレーニングにおける効果を発表してから、様々なHMBの研究がおこなわれてきたが、HMBの強い効果は、主にトレーニングしていない人たちにおいてのみる強く認められる、とされる研究結果が多かった。最近ではHMBは筋肉の破壊の抑制と、回復に大きく寄与するという考え方が強い。しかし、これらの研究はトレーニング内容のコントロールが十分でなく、バリエーションが大きかったと思われる。また、研究期間も短期間で、さらに一般的にHMBとして良く使われているHMB-Ca(カルシウム塩)が用いられているものが多かった。HMB-FAはHMB-Caに比して、投与後4分の1の時間で血中濃度が最高となり、その濃度もHMB-FAはHMB-Caの2倍となることが分かっている。2013年のWilsonらの研究により、高強度レジスタンストレーニングの30分前にHMB-FAを投与すると、筋破壊のマーカーが有意に低下し、回復が早いことが認められている。

そこで本研究ではしっかりとコントロールされたトレーニングプログラム、HMB-Caでなく、HMB-FAの使用、12週間という長い調査期間で、HMBの効果を検討した。

 

方法:

概観:調査期間を3つのフェーズに分け、二重盲検ランダム化比較試験を行った。被験者は、プラセボ投与群と、HMB-FA投与群にランダムに割り付けられた。フェーズ1は8週間の休息期間のあるレジスタンストレーニングプログラム実施、フェーズ2は2週間のオーバーリーチングトレーニング期間、フェーズ3は2週間のテーパリング期間。筋量、筋力、パワーを0、4,8,12週目の終わりにテストし、HMB-FAの慢性的な効果を評価した。オーバーリーチング期間の9,10週目の終わりに、血中コルチゾール、テストステロン、クレアチンキナーゼ(CK)を調べた。

参加者:アメリカFLのTampa大学で、24人の若者が研究対象となったが、4名が最初の4週までにドロップアウトした。参加者は筋力と除脂肪体重にて4分位に分けられ、4分位のなかから差が出ないようにランダムに2群に割り付けられた。残った20名は平均年齢が21.6±0.5歳であった。9名がプラセボ(87.1±4.8㎏、180.9㎝)、11名がHMB-FA投与群(83.1±2.8㎏、179.0±2.1㎝で、これらの若者の1RMは、平均で、スクワットが体重の1.7±0.04倍、ベンチプレスが体重の1.3±0.04倍、デッドリフトが体重の2.0±0.05倍であった。体重、身長、BMIについて二群間で有意な差はなかった。被験者はいずれも、抗炎症剤、パフォーマンスに影響するサプリメント、喫煙はなかった。これらの被験者は研究に入るまでの3か月、何もサプリメントを摂取しないようにコントロールされた。

 

評価項目:筋力は1RMテストで行われた。バックスクワット、ベンチプレス、デッドリフトが行われた。これらの種目における級内相関係数(ICC)はr=0.956 to 0.982であった。体組成は2重X線吸収法(DXA)で測定されたr=0.981。骨格筋肥大については超音波で外側広筋と内側広筋の厚みを見ることで測定された。これらのICCはr=0.975。

パワー(Peak Power)は最大努力自転車漕ぎ、およびジャンプにおいて評価された。修正されたWingateテストにおけるPPはMonarkの有酸素テストソフトウェアを使っておこなわれた。r=0.966。ジャンプにおけるPPは多要素構成AMTI力学プラットフォームにて行われた。

 

投与方法:HMB-FAは、一回1gで1日で3gが投与された。プラセボ群では同量の偽薬が投与された。最初の一回はトレーニングの30分前に投与され、残り二回は昼食、夕食と共に投与された。トレーニングのない日は、三回がそれぞれ三食と共に投与された。偽薬は、等カロリーのコーンシロップを使い、HMB-FAと同じ食用オレンジ香料と甘味料で味付けされた。投与に当たる研究者はデータ収集者、解析者と別グループで接触を禁じた。研究者も参加者も、自分がどちらのグループに割り付けられたのか、研究が終わるまで分からないようにした。研究開始の2週間前より研究期間を通じて、25%のタンパク質、25%の脂質、50%の炭水化物で構成された食事に統一された。サプリメントのコンプライアンスは98%であった。HMB-FAの純度は高圧液体クロマトグラフィーmanufacturerを用いて分析され99.7%であった。主な不純物は酢酸と水であった。一般のサプリメント に混入されているとの報告のあるDHEA(男性ホルモンの一種)については、MTIアッセイにて検査され、今回のHMB-FAには含まれていないことを確認した。大腸菌、リステリア、サルモネラ、銅、亜鉛、カルシウム、水銀、カドミウム等危険物も測定感度以下である事を確認した。

 

トレーニングプロトコル:トレーニング期間は3つのフェーズに分けられる。第1フェーズは1~8週の期間で、等間隔に休息日の入った、週3回のレジスタンストレーニングを行う。この内容は2009年にKraemerらが行った方法を修正して行った。第2フェーズは9~10週で、2週間のオーバーリーチングサイクルであり、週5日のレジスタンストレーニングと追加の日でWingateテストとパワーテストを行った。第3フェーズでは、11~12週で、トレーニングの量を徐々に減らして行く、テーパリング期間とした。何らかの理由で所定の日にトレーニング出来なかった場合は24時間以内にトレーニング行なう事とした。コンプライアンスは100%であった。

 

静脈サンプリング:採血や、検体の保存方法、ホルモンの日内変動を避けるための定時の採血、。0,4,8,12週で採血が行われた事等書いてありますが、割愛します。

 

生化学分析:血清総テストステロン、フリーテストステロン、コルチゾール、CRPがELISAで、CKがcolorimetric procedureにて測定され、筋タンパク破壊のマーカーとして尿中3-メチルヒスチジンとクレアチニンの比が測定された。参加者は、8,9,10週の検査前三日間は、肉抜きの食事を取り、24時間蓄尿を行い、その尿を使って、24時間の3MH:Cr比を測定した。

 

統計手法:一方向ANOVAモデルを使い、SASにおけるProc GLMプロセスでデータ処理を行った。この研究の一次アウトカムは、筋力とパワーであった。二次アウトカムは筋肥大であった。その他データ処理について記載されていますが、割愛します。

 

結果:

筋力とパワー:HMB-FAはプラセボと比較して著明に筋力を増大させた。スクワット、ベンチプレス、デッドリフト、および合計の挙上重量が表1に示される。12週のトレーニング後の結果として、HMB-FA投与群では平均で、スクワットで25%,ベンチプレスで12%,デッドリフトで16%、トータルで18%の挙上重量増加を認めたが、プラセボではそれぞれ、5%,3%,9%,6%の増加に留まった。トータル挙上重量で、HMB-FAでは77.1±18.4kgの増加に対して、プラセボでは25.3±22.0kgの増加であった。4,8,12全ての週において、HMB-FA投与群の筋力がプラセボ優った。

ウィンゲートのピークパワー、垂直跳びパワーにおいてもそれぞれ、18%:12%、19%:12%の割合でHMB-FA投与群のパワーが優った。

オーバーリーチングフェーズにおいて、プラセボ群では表2に示すように著明に筋力の低下が認められたが、HMB-FA群では、低下の程度は僅かだった。その低下の割合は、スクワット、ンチプレス、デッドリフト、トータルの順でプラセボが、-5.6%,-4.8%,-5.6%,-4.5%であったのに対し、HMB-FAでは、-0.6%,-1.0%,-1.5%,-0.4%であった。トータルの挙上重量の減衰は、プラセボ群では-20.2±15.2kgに対して、HMB-FA群では-2.0±18.6kgであった。増加の差と、減衰の差が加わった事で、9,10週での2群間の筋力の差は非常に大きな物となった。

 

体組成と筋量計測:12週後の結果としてHMB-FA投与群ではプラセボ群と比して体体積と除脂肪体重において著明な増加を認めた。表3に示す(12wLBM HMB-FA:placebo=74.5±1.1kg:69.2±1.1kg)。HMB-FA投与群では体脂肪が-5.4±1.6kg減少したが、プラセボ群では-1.7±2.7kgであった。HMB-FA投与群ではプラセボ群と比して大腿四頭筋の厚みが著明に厚かった(◬﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽とが分かった。さして重増加を12wQuadriceps depth HMB-FA:placebo=57.4±2.1mm:52.6±2.1mm)。

 

筋ダメージ、ホルモン、パフォーマンス回復について:表4に示すように、CKの値においては4週目にHMB-FA投与群がプラセボより明らかにCKが低値であった。コルチゾールにおいては、HMB-FA投与群がプラセボ群より比較的低値であった。CRPについては差は無かった。テストステロンにおいては差は無かった。パフォーマンス回復を示すPRSについては、8,12週において、HMB-FA投与群が高い値を示した。

オーバーリーチング期間においては、表5に示すように、CKの値において、プラセボ群ではおおよそ2倍に上昇したのに対し、HMB-FA投与群ではCKはほとんど変化しなかった。コルチゾールにおいてもHMB-FAは低い傾向が見られた。24h3MH:Crにおいては2群間で差は無かった。PRSでもHMB-FAは高い傾向が見られた。

 

安全性検査:血液生化学血算において、どちらの群も異常を認め無かった。尿生化学同様。有害事象も認め無かった。

 

考察:

まず、12週のHMB-FAの投与により、レジスタンストレーニングを行なう個人には骨格筋肥大、除脂肪体重増加、筋力増加、パワー増加において、プラセボと比して大きな増進効果を認めた、と結論出来る。さらにHMB-FA投与群では体脂肪もプラセボより大きく減少することが分かった。そして最後に、HMB-FA投与で、オーバーリーチング期間における筋力とパワーの減衰を防ぐこと、さらに筋破壊とコルチゾールの増加を防ぐことが分かった。

 

HMB-FAの骨格筋肥大の効果と、LBM(除脂肪体重)の変化:

私達の研究では、HMB-FA投与群はプラセボと比してLBMと筋の厚みについて大きく増加をすることが示されたが、この結果は2009年にKraemerらの研究と一致する。彼らの研究は12週の休息日のあるトレーニングプログラムによるものだったが、対象はトレーニングしていない人たちであった。それ以外のトレーニング経験者に対してこれまでに行われた研究は矛盾する結果を示していた。HMBは効果は無いとする結果(1999年Kreiderら、2001年Slaterら)のものと、筋量アップの効果ありとする結果(1996年Nissenら、2009年Thomsonら)のものがある。このような曖昧な結果が出たのにはいくつか理由があるのだろう。

文献によれば、筋肥大を見るためには、個人のトレーニングの状況に合わせて、トレーニングの休息期間とトレーニングプログラムを適切に増加させる必要がある(2009Monteiroら、2011Turnerら)。トレーニング経験者に対するこれまでの研究は4週から9週間までの研究期間のものしか無かった。しかしHMBを使った研究で6週間未満のものでは、ほとんど変化を認め無かったため、研究期間が不適切に短かかった、と考えられる。2009年にThomsonらによって行われた研究では、これまで最長の9週間の研究期間で、トレーニング経験者へのHMBの効果が検討されたが、研究では、監督されない、休息期間の無いトレーニングで、コンプライアンスも中等度(84%)、肥大を計測するアウトカムとして変動や誤差の大きなものを使っていた、など、不利な条件が重なったにも関わらず、HMBによる、LBMの著明な増加を認めていた。

私達の研究ではトレーニングの熟練者を対象とし、トレーニング経験の浅い人でしばしば認める筋肉のストレスとダメージを要約する為に、複雑な研究デザインを用いた。反復の計画、強度、休息期間を、ワークアウト毎、週毎、フェーズ毎に変化させた。CKの測定結果は私達のデザインがトレーニング経験の浅い人の筋のストレスとダメージを要約するのに十分奇抜であったことを示している。HMB-FA投与群では、かつての研究でトレーニング未経験者で認めたような結果を、得ることが出来た。まとめると、HMBによる筋肥大とLBM の増加はトレーニング未経験者でも、トレーニング経験者でも、そのトレーニングの刺激が、骨格筋に十分に重大で頻繁な動揺をさせるほどの強度であれば、同様に起こりうるのだと、とう知見が得られた。HMB-FAを含む、HMBの作用機序は明らかではないが、現在のところ、筋再生におけるタンパク質の利用速度を改善している、と考えられている(2008Wilsonら、2011Zanchiら)。この説明は、我々の12週間のトレーニングに置いて、HMB-FA投与群では骨格筋の破壊が少なかったという結果と合致する。

 

HMB-FAの、筋力とパワーに対する効果:

筋力とパワーは、スポーツでの根本的な成功にとって最も必要な能力である。これまでの研究からは、HMBによる筋力とパワーの変化は、休息期間の無いトレーニングよりも、休息期間のあるトレーニングでより効率的に効果を発揮する。このHMBの効果は、レッグエクステンションやプリーチャーカールのようなアイソレイテッドな種目よりも、スクワット、ベンチプレス、垂直跳びのような、コンパウンドな種目においてより確認し易い、と考えられる、これは、恐らくコンパウンド種目の方が骨格筋全体に与えるストレスが大きいことが原因と考えられる。

 

体脂肪に対するHMB-FAの効果:

テネシー大学のMichaerl Zemel研究室での最近の研究によると、HMBは、マウス由来の3T3-L1アディポサイトとC2C12筋細胞において、脂肪酸の酸化を促進し、AMPリン酸化酵素とSirt1Sirt3の活性を促進することが分かっている。詳述すると、SirtタンパクはNAD+依存性タンパク脱アセチル化酵素のクラスに属し、エネルギー代謝に関わっており、NAD+/NADH比を通じてエネルギーバランスを調節している。Sirtタンパクはヒストンとその他タンパクのアセチル化を調節している。AMPKはこれもエネルギーバランスを感知するが、AMP/ATP比を介してのことである。まとめると、これらのタンパクはミトコンドリアの代謝活性を高め、脂肪の酸化、エネルギー代謝、活性酸素に対する防御を高める効果がある。結果として、HMBはミトコンドリアの代謝を高め、脂肪の酸化を促進する。私たちの研究目的はHMBの脂肪に対する効果ではなかったが、HMB-FA投与群ではプラセボより体脂肪が低くなった。この結果はKraemerらの2009年の研究結果と一致する。

 

オーバーリーチングサイクルに対するHMB-FAの効果:

オーバーリーチングの起こる基本原因はトレーニングの刺激と回復の不均衡にある。私たちの結果においても、プラセボ投与群では、オーバーリーチングサイクルによりパワーと筋力と回復力が減衰することが示された。しかし、HMB-FA投与群では、減衰しなかった。それ以上に筋破壊のマーカーである血中CKと、ストレスホルモンであるコルチゾールががHMB-FA投与群では上昇しなかった。最後の2週間でトレーニング量を減らす、てーぱーリングを行ったが、プラセボがもともとのパフォーマンスに回復したのに対して、HMB-FAでは筋力パワーともにさらに頑健になる、という結果であった。この結果により、HMB-FAはそれ自体として、トレーニングの刺激に直接作用を及ぼす、ということが示される。私たちの研究デザインはある意味革新的であったが、研究結果は過去の文献の内容を裏付けるものであった。たとえば、HMBが減量中の柔道選手のパワーとLBMが低下するのを防いだとする2010年Hungaらの研究、HMBが高強度レジスタンストレーニング後のコルチゾールの上昇を急速に抑える、とする2009年Kraemerらの研究、HMBが血中筋ダメージの指標を抑制するとする1996年Nissenや2005年Somerenらの研究、苛烈で急速なトレーニングメニュー後の主観的な回復に関する指標についての2005年Somerenらの研究、これらの結果と一致するのである。

 

結論:

私たちの今回の研究で、HMB-FA摂取と、高強度間欠的トレーニングプログラムの組み合わせにより、LBM、筋肥大、筋力とパワーが増大するということが示された。それだけでなく、さらにきついプログラムによるオーバーリーチングサイクルにおいてもHMB-FAの摂取により、パフォーマンスの低下を防ぐことができる、と示された。将来の研究により、HMB-FAがなぜ、高強度トレーニングの弊害を除去し、良い効果を増強することができるのかという、作用機序が明らかにされることが待たれる。

 

 

 

 

 

加美川クリニック院長 個人の考察。

 

さて、途中から要約するのも面倒になったので、割愛した部分以外は論文の全文を翻訳しました。かなり労力を要する作業でしたが、サプリメントの世界で、なかなか得られることのないエビデンスを検証することの大事さを訴える意味で、敢えて労力を割きました。

この研究の内容が正しければ(虚偽の報告でなければ)、HMB-FAを1日3g、摂取しながら3か月トレーニングをすることによって、身長180㎝、体重85㎏程度の若者が、ただトレーニングだけ3か月行うよりも、5.3㎏筋肉量を余計に増やすことができ、拳上重量で12%も差をつけることになる、というHMB-FAの効果が期待できることになります。

これは、筋力について、現在の私に当てはめてみます、現在の私のベンチプレスの1RMは120㎏なのですが、ただこのままトレーニングを続けても3か月後には124㎏しか上がらないのに、HMB-FAを摂取しながらトレーニングをすれば、3か月後には134㎏が上がる、ということになります。

体組成については、私は身長180㎝体重85㎏ではないので、期待できる変化量は、この研究どおりではないのですが、ためしにこの変化が実際に起こるとすると、現在の私の体重は68㎏、脂肪量が8.4㎏、LBMが58.5㎏で体脂肪率は12.6%ですが、

ただ3か月トレーニングを続けると脂肪量が6.7㎏、LBMが60.6㎏となり、体脂肪率は9.9%となります。

しかし、HMB-FAを飲みながら3か月トレーニングをすると、脂肪量が3.0㎏、LBMが65.9㎏となり体脂肪率は4.3%となります。

筋肉量において、3か月で5㎏多く増加し、さらに脂肪も3.7㎏分余計に減る、というのはすごいことで、これはちょっと今までのサプリメントでは信じられないほどの大きな効果、ということができます。

 

ただ、私がこの論文にけちをつけるとすると、

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4019830/table/Tab3/

で示されるような、表の数値の、95%信頼区間、もしくは標準偏差の部分。これがどの週においても、たとえば体重においては±0.9㎏と表記されていますが、どの週においても、数値のばらつきの幅が一定であるとはちょっと考えにくいので、この±の部分は少なくとも信頼できない、という気がします。この辺りは、統計の専門家のお話を聞いて、この論文が信頼できるものなのかどうか、聞いてみたい、と考えています。

 

いずれにしろ、私はこの論文を見つけてから、HMB-FAをサプリメントとして摂取することにしました。現在日本ではHMB-FAは取り扱われていないので、アメリカのMuscleTechというところで購入しました。5月15日から一日3gで摂取を開始しています。8月の私の結果報告をお楽しみに!